車のカップ
本日は車のカップキットのお話。
カップキットはブレーキのマスターシリンダーとドラムブレーキ、クラッチのマスターシリンダーとレリーズシリンダーに設定されています。
各部品の完成状態(アッセンブリーと言います)の内部交換部品キット(インナーキット)のゴム部品だけをセットしたものをカップキットと言います。
ちなみに、平べったいゴムばかりを集めたキット(ブレーキキャリパー等)をシールキットと言います。
今回はリアブレーキのカップキットの交換。
リアタイヤを外し、ブレーキドラムを取り外すと、このような構造になっています。
スプリング類を外すと、簡単にブレーキシューが外れてきます。
ブレーキシューをぶら下げているのは、パーキングブレーキのワイヤーです。
今回はカップキットの交換ですから、シューの取り外しはここまで。
次はホイールシリンダーです。
ホイールシリンダー両端についているゴムカバーを外し、金属部分を引っ張ると内側のピストンが抜けてきます。
ホイールシリンダーは鉄製ですが、ピストンはアルミ製です。
まだ鉄製を使用しているメーカーもありますが、錆に強い分アルミはいいですね。
しっかりアルマイト処理もされています。
そして、ピストンについているのがゴムカップです。
ここまでがワンセットになっているので、カップキットと言います。
ゴムカップのアップです。
左が外したもの、右が新品です。形状の違いが分かりますか?
ピストンとシリンダーの間で、密閉性を良くするための機能を持っていますので、長く使用すると、左のように窄まってきます。
摩耗したのではなく、押さえつけられている間に変形してしまうのです。
この変形がもっと進むと密閉性が悪くなり、ブレーキの利きが悪くなったり、オイル漏れを起こしたりします。
以前は車検2回に1回の交換が義務付けられていましたが、今は悪くなると交換です。
これらゴム類を交換して元に戻して終了ですが、戻すときにシリンダー内に傷がないことを確認する必要があります。
まれにゴミが入って、シリンダー壁に傷がついている場合があります。軽い傷であれば、磨いて修正しますが、深い傷の場合はゴムカップで密閉できないので交換となります。
ちなみに、ドラムブレーキは今はほとんど使用されなくなりました。
ドラムブレーキはディスプブレーキと比べると、シューの面積が大きくてブレーキの利きは良いと言われています。しかも、踏力が少なくても十分制動能力が確保できます。
なぜ廃れたのかというと、構造上シューをブレーキドラムでカバーしてしまうため、放熱効果が低いからです。
ブレーキが熱を持ちすぎると効きが悪くなるため、高速走行には不向きです。
さらに、踏力を補佐するブレーキブースター(倍力装置)が普及し、ディスクブレーキのウイークポイントもなくなってしまいました。
ドラムブレーキは、今はパーキングブレーキぐらいにしか使用されなくなりましたが、制動能力の高さと構造の簡単さはなかなか優秀なブレーキシステムですよ。
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